そのお店は今年11月上旬にオープンして、わずか1日で休業に追い込まれていた。それは設備不良。排水の完全なつまりだった。しかも原因は不明。そしてその詰まりを抜くためいくつかの業者さんが来たが、解決の方向性が見えぬまま12月に迫ろうとしていた。
そんな中弊社が呼ばれ
男たちの戦いが始まった。
時にテナントさんの内装業者さんの施工ミスにより漏水があり
時に誰も水を使用していないのに、外している便器から大量の水が溢れてくることがあった
5日わたる様々なチャレンジと調査の結果
ビル本管の横引管が詰まっていて、階下より天井上を走る排水管に直接アプローチしないと解決しないと踏んだ。
というのも上の階からはカメラも途中までしか入らないし、ワイヤーも入らないし、高圧洗浄でも詰まりは抜けない。カメラが進まなくなる手前で、ほんのり見えた鉄管の錆の残骸。まずはこれを取り除こうと。これを取り除けば解決するのではないか?やってみようと、その作業はビル管理の方も立ち会いのもと行われた。
詰まっている汚水管を切るので、神経をすり減らす。一気に鉄管に切り込みをいれすぎると、階下漏水は免れない。少し切り、その切り口からすこしずつ水を出し、バケツに流し込み、バケツから水中ポンプで使用できる別の縦管につなげる
鉄管をむき出しにして、異物を吸引していくと出てくる鉄(錆)の残骸
鉄くずが管内でびっしりだったので、その間をワイヤーがすり抜けても直ぐつまる状態これが解決したようで解決していない理由でもあった。ただたくさんの鉄くずを取り、横引管が完全に綺麗になった。これでお店の営業はできると成功を信じた
そして管内カメラで異物の取り残しがないか、縦管の方にもカメラを向けた
縦管も詰まっていた・・・・・・
この映像(管内カメラは基本画像ではなく映像です)を見た時、私達スタッフ、そしてもともとの依頼主であるテナントさん、さらにビル全体を見るビル管理の方の脳内に浮かんだ思いは1つ。
「ゲームセット」
ここまでやって解決に導けない
俺たちはよく戦ったよ・・結果こそ出せなかったけど、これはもう大工事しかない、ビルの縦管もストレートではなく、各階で位置が異なる(図面ではストレートなのに)
テナントのお店はしばらく使えないけど、だってこれだもの・・・仕方ない。来年にはビル管の工事会社が動けるといってるし・・俺たちがやってもいいけど、年内予定の工事もちらほらあるので・・うちがやるにしても飛び飛びになるから、ビル管に任せた方が結果的に早い営業に漕ぎつけられるのではないか・・それまでテナントさんは休業補償もらってお店を休みにした方がいいのではないか?現実はそれしかない。
誰もが年内のお店の運営は無理だと思った
我々は基本的には解決しない排水トラブルはない。今年2018年に作業した「詰まり抜き」の依頼で、解決できなかった事例は数百の中で1件だけ、それは事例にも書いたが、汚水管の通気口のつぶれ。そしてそれはそのビルのビル管さんにバトンタッチ。我々の出る幕がなくなっただけのこと。
自賛になるが、諦めの悪さなら他の同業他社さんよりはるかに悪いし、あるビルの本管の横引が勾配がつかない(直らない状態のとき)、翌日にはピットをこしらえて問題を解決したことさえあった。
それでも無理だ。
帰ろう。
多少割引もしよう。
かかった費用は割り引く必要は無いと
ビル管の人も気を回してくれるが
気持ちは割り切れない。
「持つよ・・・」
自分でも驚いた
持てるかどうかはわからなかった
それはワイヤーの重みも入れると40kg近いトーラーを持つよという私なりの覚悟だった。だからお前はトーラーを回せ!仲間に伝えた時、私は悲壮な覚悟だった。
「無理だ」
仲間は言った。
確かに無理だった。
40kgあるものを頭上より高く数分間持ち続けることなど、慢性的な運動不足かつ肥満体の私にできるはずはなかった。なんなら糖尿の気さえある。
だけどやりきれない思いが私を掻き立てる。
この時私の脳内に流れていた音楽は
中島みゆきのやつだ!!
プロジェクトエックス的な
大袈裟ではあるがこのまま引き下がれない
無理かどうかやってみないと解らない!気合だっ!と体育会系な勢いで言ってはみたが、少しトーラーを持ち上げてみて1秒で無理だと身体が判った。
重かった
1秒で重かった
普段持ちなれているのに
1秒で重かった
まごうことなく重かった。
めっさ重かった
後には引けなくなってテンパっている私を見かねて
仲間が言った。
「吊るそう」
「吊るしたトーラーを揺れないように抑えることならできるだろう」
この縦管にワイヤーを入れたとて詰まりが抜ける保証はない。むしろどこまで詰まっているか分からない。ただ、この切った鉄管の隙間からワイヤーを入れればダイレクトにワイヤーの力は伝わる。
メジャーを入れて、3.5mを測るとさらに階下のパイプスペースの曲がり当たり(縦管はストレートに落ちていない)そのあたりが一か所詰まっているだけの可能性もある。
そこを切り、工事をすれば完全に直るだろう。だけどそれは直ぐにはできない。お店は明日にも営業したい。貫通する可能性は極めて低い。
画像はこの時、へとへとになりこれ以上撮影している余裕がなかったが、
ワイヤーの先端が戦うこと10分程度
なんと・・・詰まりは抜けた。
詰まり抜きの仕事を専門として長いけども、高い場所にトーラーを置いて回したことならあるが、トーラーを釣って作業したのは初めてだ。
難航する排水つまりの現場、他社さんが解決できなかった現場でも必ず突破口はある。それは気合とかよりも、道具の質だったり、経験だったり、詰まりを抜く要因はどちらかというと原因があり、それを無くせば抜けるわけで、見えない排水管の中のこととはいえ、科学的根拠に基づき抜けていくと思っている
だけどどんな現場に行くときも、行く前はいつだって怯える。抜けなかったどうしよう?という恐怖にかられながらいつだって現場に行く。そして抜けた時の喜びはお客さんと共有できるときこれ以上の至福はない。
テナントの店長さんは詰まりが抜けた時、1か月間振り回された気持ちもあるだろう、オープンして成功を収めるために色々気を回し無償で費やした時間は幾ほどか、すでに雇ってしまっているスタッフのことを思い、幾夜眠れぬ夜があっただろうか。詰まりが抜けた時店長さんは男泣きをしてくれた。
結果を行ってしまえば、営業開始はさらにいくつかのトラブルがあって数日伸びたが、それでも後の問題はそれほどたいした問題ではなかった。
自分も5日も詰まり抜きでかかった現場は初めてだった。いつもだいたい1時間もかからない。難航現場でもせいぜい1日、工事を含めても2日くらいで終わる。
結論から言ってしまえば、原因が分かっていれば排水管を取り換えればいい。その工事をする人なら世の中にはたくさんいるだろう。そこはコストだけの問題だ。だけど原因不明なものに挑み続けて無駄になるかもしれない作業の連続で、それでもなお、無駄かもしれない作業を一か八かしてみる。
本当だったら、縦管が詰まっているとき、別の話になるので、ここで帰っても良かったのだし、原因も解ったのだから及第点だったかもしれない。だけど店長さんの思いには答えてはいなかった。そこにはうちらの自己満足だけが残るだけで、その作業で得た利益で食べる食事は果たして美味しいのか。
それは非科学的で時に泥臭い話だけども、勝てるか負けるか正直いつだってわからない。もしかしたら詰まりは抜けないかもしれない。それでも全力で戦おうとすると仕事がすごく面白いと思った。
心から良い現場に巡り合えたと思います。
まぁ二度とこんな現場は嫌だけど(笑)
いつか店長さんがこのブログを読み返してくれたら嬉しいな。
恥ずかしいので見たよとは言ってほしくないけど(笑)
このお店さんが大成功を収めることを心より願います。
このお店さんというより・・店長さんかな。
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